Japanische Klassiker mit Furigana
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ぶけわらじ
武家草鞋
山本 周五郎
Lesen Sie 武家草鞋 (ぶけわらじ) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 17.835 Zeichen · 35 Bildschirme
老人は口数の少ない人とみえてときどきさりげない返辞をするだけだが、娘は話し好きらしく殆んどひっきりなしに声が聞えてくる、それがいかにも明るく爽やかだし、話題はどうでも話してさえいれば楽しいという風で、聞いているほうがしぜんと頬笑ましくなる感じだった。――心ゆたかに育ったんだな、伝三郎は夢ごこちになんどもそう思った、きっと性質もやさしいむすめだろう。
呼び起されて本当に眼が覚めたのは昏れ方であった。粥が出来たので此処へ持って来るから顔を洗うようにと云う。伝三郎は起きて頂戴すると答えて夜具をはねた。……娘に案内されて裏へ出ると、若杉の垣の向うはうちひらけた段畑で、その畑地の果てるかなたには、峡間に夕雲のわき立った重畳たる山々が眺められる、垂れさがった鼠色の雲にはもう残照もなく、耕地も森も、薄の白く穂立った叢林も、黄昏のもの哀しげな光りに沈んで、しずかに休息の夜の来るのを待っているようにみえる、なんというしずかさだろう、伝三郎は切なくなるほどの気持で心の内にそう呟いた。
「そんなにご熱心にどこをごらんなさいますの」娘は半へ水を汲みながらそう問いかけた、「……ああ二俣山を捜しておいでなさいますのね」