Japanische Klassiker mit Furigana
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ぶしゅうこうひわ
武州公秘話
谷崎 潤一郎
Lesen Sie 武州公秘話 (ぶしゅうこうひわ) von 谷崎 潤一郎 (たにざきじゅんいちろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 107.572 Zeichen · 209 Bildschirme
「弓馬の家に生れたからには、いつ肉身に死に別れても仕方のないことゝ、女ながらもそれは覚悟をしています。だからお父様が戦場で討ち死に遊ばしたのならあきらめようもありますが、まるで物取りの仕業のような情ない目にお遇いなされ、殺されたうえに云いようのない辱めをお受けなされては、子としてその恨みを忘れることが出来るものか、まあ考えて賜るがよい。あの時わたしは御病死だと聞かされて、そうだとばかり思い込んでいましたけれども、お母様やお兄様が御臨終のお顔を拝ませて下さらないので、内證で乳母にせがんだのです。乳母はわたしがあまりうるさく云うものですから、しまいに我を折って、『ではそうっと拝ませて上げますが、実はお父様は御病気でおかくれになったのではないのですよ、お父様のお姿がどんなに変り果てゝいらしっても、びっくりなすってはいけません』と、何度も念を押してからこっそり拝ませてくれました。あゝ、ほんとうに、他人の其方が聞いてさえ好い心持はしないのですもの、その時のわたしの口惜しさはどれほどでしたか。乳母に連れて行かれたのは真夜中のことでしたが、お遺骸を安置してある上段の間の御簾のかげには、わたしたちの外に誰も人気はありませなんだ。