Japanische Klassiker mit Furigana
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ぶしゅうこうひわ
武州公秘話
谷崎 潤一郎
Lesen Sie 武州公秘話 (ぶしゅうこうひわ) von 谷崎 潤一郎 (たにざきじゅんいちろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 107.572 Zeichen · 209 Bildschirme
そしてとき/″\夫人の方へ盃を廻しては、
「どうかの、そなたも今すこし過さぬかの?―――」
と、そう云うたびに、何処かだゝッ児じみたところのある、好人物を丸出しにした眼元を細くして、はにかむようにしながら、じっと夫人の横顔へ微笑を送った。尤もその言葉を彼が発音すると、
「ろうかの、ほなたもいまふこしふごさぬかの?」
と云うように聞えるのだが、もうそんなことは彼自身には気にならなかった。たゞ晴れの場所で物を云うときに、以前は大名の威厳を保って堂々と云う癖があったのが、兎唇になってから段々声の出し方が臆病になり、恐々しゃべる習慣がついて来たので、全く安心しきっている今の場合でも、どうかすると蚊の啼くような微かな声になる。そう云えば夫人の顔を見る折にはにかむような様子をするのも、一つには心底彼女に惚れ抜いているのが我ながら照れ臭いせいでもあろうが、一つには、矢張頭の隅ッこに「自分は不具者だ」と云う意識が潜んでいて、それが動作に反映するのであるかも知れない。兎に角片羽になる前の織部正は我武者羅な餓鬼大将のような性質で、こんなにいじけてはいなかったのである。
図
桔梗の方は受けた盃をゆっくりと飲みながら、しばらく庭前の雨のおとに耳を澄ます風情であったが、やがて、