Japanische Klassiker mit Furigana
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ぶしゅうこうひわ
武州公秘話
谷崎 潤一郎
Lesen Sie 武州公秘話 (ぶしゅうこうひわ) von 谷崎 潤一郎 (たにざきじゅんいちろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 107.572 Zeichen · 209 Bildschirme
今日は暇だからなんでもお相手をするよ」
そんなことを云って機嫌よくしている夫の顔を、彼女は嬉しそうに覗き込んだ。
「何をして遊びますの」
「なんでもよい。そなたはどんな事が好きだね」
「では、蛍狩をなさいませんこと? お庭へ出て、―――」
彼女の愛くるしい、ぱっちりした眼の中に、あの、子供が何か素晴らしいことを思いついた時にする、はっと跳び上るような喜色が浮かんだ。血色のよい豊かな頬が一と際つや/\と輝やきを増して、物を云う調子までが全く子供のようであった。
「―――お庭には蛍がたくさんいますのよ、あの築山の向うの、杜若が咲いているあたりに、―――」
若い夫婦は腰元どもを連れて、それからひとしきり庭で蛍を追い廻した。
「此方よ、此方よ、みんなこっちへ来なくって?」
などゝ云う松雪院の花やかな声が、腰元共のきゃっ/\と騒ぐこえの中に際立って、彼方の叢や此方の汀へ移って行った。一国の領主の姫君としてしとやかに育った彼女ではあるが、十五と云えば手でも足でも伸び/\と発達して、体じゅうが健康に張り切っている盛りであるから、彼女は長い袂や裾を邪魔にしながら、まるで小鹿のように元気よく走るのであった。