Japanische Klassiker mit Furigana
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ぶしゅうこうひわ
武州公秘話
谷崎 潤一郎
Lesen Sie 武州公秘話 (ぶしゅうこうひわ) von 谷崎 潤一郎 (たにざきじゅんいちろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 107.572 Zeichen · 209 Bildschirme
彼女は、もうひょっとすると道阿弥がほんとうに死んでいるのではないかと思った。彼女は試しに彼の鼻の上を押してみたり撫でゝみたりした。と、彼女のほっそりした指の先が、冷めたく、ぬるりと濡れるのであった。見ると、「首になった道阿弥」の額から蟀谷の辺に冷汗がたら/\流れている。そして剃刀の刃がその首の前できらりと閃めいた瞬間に、急に死顔の顔色がすうッと青く変って行った。
図
「殿様、………」
と、そのとき松雪院が声をかけた。
「………あたしからお願い致します、許してやって下さいましな」
「いや、死人の鼻を切るくらいはやさしいことだよ。血を見ることを恐れるようでは物の役に立たないから、お久にその修業をさせてやろうと思ってね」
「でも、道阿弥が可哀そうでございます。まあ、あの様子を見てやって下さいまし。あんなに一生懸命にお云い付けを守っているなんて、感心だとお思いになりませんこと?ねえ、お願いですから、あの熱心に免じて堪忍してやって下さいまし」
「はッ、はッ、は」
不意に河内介は、はにかんだような顔をして、力のない声で笑った。
「よし、よし、そなたがそう云うなら思い止まろう」