Japanische Klassiker mit Furigana
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ぶしゅうこうひわ
武州公秘話
谷崎 潤一郎
Lesen Sie 武州公秘話 (ぶしゅうこうひわ) von 谷崎 潤一郎 (たにざきじゅんいちろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 107.572 Zeichen · 209 Bildschirme
「はいほの頼み、………はいほの頼み、………」
と、苛立ちながら繰り返しては、
「ほれはひのふびを、………ほれはひのふびを、………」
と、自分の首をさし伸べて、手で斬る真似をしてみせた。それで斯う「最後の頼みだから介錯してくれ、某の首を誰にも見せずに葬むってくれ」と云っているらしいのが分ったのであったが、此の時既に火は三人の傍近くまで燃えひろがって、方々の隙間から風が呻りをたてながら凄じい焔を挙げていた。まことに此の時、桔梗の方も、則重も、武州公も、不思議な悪因縁に繋がれたまゝ業火の渦に捲き込まれてしまったら、三人ながら却って幸福であったかも知れない。少くとも則重はそれを望んだであろうし、恐らくは桔梗の方も、此処で諸共に焼け死んだらば両方へ義理が足せると思ったでもあろう。彼女は完全に復讐を遂げ、父の恨みを十二分に晴らした。今、此の鼻缺けの、兎唇の、片耳のない夫を連れて冥途へ行けば、それが父への何よりの土産になる。生きて此の世に罪を重ね、不義の汚名を流すよりは、その方が優しであろうものを。………だが、武州公一人だけは火にも負けない意志と熱血の所有者である。