Japanische Klassiker mit Furigana
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ぶしゅうこうひわ
武州公秘話
谷崎 潤一郎
Lesen Sie 武州公秘話 (ぶしゅうこうひわ) von 谷崎 潤一郎 (たにざきじゅんいちろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 107.572 Zeichen · 209 Bildschirme
とだゝを捏ねてもよかったのに、何故かその時の法師丸は、少年らしい無邪気さを失っていた。そして限りない心残りを覚えながら、老女に促されて梯子段を下りて行ったが、さっきの恍惚感が後に長くつゞいていて、いつ迄も彼を陶酔の状態に置いた。
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「さあ、もう此れで気がお済みになりましたでしょ。今夜のことは私の一存で計らって上げたのでございますから、誰にも仰っしゃってはいけませんよ」
寝所の入り口へ来たときに、老女は彼の耳元へ顔を寄せてそう云ってから、
「ようございますね、―――ではお静かにお休みなさいまし」
と云って引き取ってしまった。衝立の蔭へ這入ってみると、よいあんばいに青木主膳は何事も知らずすや/\と寝ている。しかし法師丸は、自分の寝床へもぐり込んでからも、容易に興奮が治まらないで、眼が冴えるばかりであった。じっと闇を視つめている彼の瞳には、またゝく燈火の明りの下にころがっていた無数の首、その表情、皮膚の色、血のにじんだ切断面、―――それから、それらの静寂な物体の一群の中で、生き/\と動いて働いていたなまめかしい指、分けてもあの十六七の美女の圓顔が、一と晩じゅう怪しい幻影となって泡のように消えたり浮かんだりした。