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Japanische Klassiker mit Furigana

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ぶしゅうこうひわ

武州公秘話

谷崎 潤一郎

Lesen Sie 武州公秘話 (ぶしゅうこうひわ) von 谷崎 潤一郎 (たにざきじゅんいちろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 107.572 Zeichen · 209 Bildschirme

Aozora Bunko

彼女はその仕事を無心で勤めているらしいのだが、結い上げた首の髪かたちを点検するが如く死人の面上へ眼をそゝぐときに、必ずあの謎のような笑いが頬に上った。

思うにそれは此の女の生れつきの愛嬌なのかも知れない。人の前へ出る時にあいそ笑いを洩らすのが癖になっていて、死人に対しても自然とそれが出るのかも知れない。長いあいだ死人の首を扱っているうちに、その首が持つ凄さには無感覚にさせられて、いろ/\な化粧を施してやることから却って愛情をさえ抱くようになり、生きている人に対するのと同じ心持がすると云うことも、至極当然の経路である。しかし此処へ突然這入って来た者の眼には、一方に色の青ざめた、断末魔の苦渋の名残をとゞめている首があり、一方にうら若い色白の女の、微笑をたゞよわせた紅い唇があるとすると、その微笑がどんなにかすかなものであっても、甚だ強い刺戟を受ける。それは残忍の苦味を帯びた妖艶な美である。だから既に十三歳にも達した法師丸が、その美に酔わされたことは一往訝しむに足りないけれども、彼はその上にも、普通の男子には有り得ない極端な感情を経験した。「道阿弥話」には当時の彼の心理状態が精細に語られているが、それに依ると法師丸は、その美女の前に置かれてある首の境涯が羨ましかった。