Japanische Klassiker mit Furigana
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ぶしゅうこうひわ
武州公秘話
谷崎 潤一郎
Lesen Sie 武州公秘話 (ぶしゅうこうひわ) von 谷崎 潤一郎 (たにざきじゅんいちろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 107.572 Zeichen · 209 Bildschirme
彼の歓喜が有頂天に達したときに、女の頬から次第に笑いが消えて行ったので、少年は暫く茫然として、まだ夢のあとを追いながら、魂を失った人間のように立っていた。が、女がその首を左側の係りの方へ廻そうとするのを見ると、急に少年は、しーんとした屋根裏の沈黙を破って話しかけた。
「どうしたの、それは? その、お前が持っている首、―――」
法師丸はいつになく自分の声がふるえているのに心づいた。そして言葉に力を入れて云い直した。
「え? その首は鼻がないじゃないか?」
「は、―――はい」
娘は油で光っている手を首板の上に衝いて、貴人に応対する場合の慇懃な姿勢を取った。そうしながら彼女はチラと少年の顔を仰ぎ視たけれども、すぐに又項を垂れて、一層しとやかに、うや/\しいお時儀をした。
「鼻を斬られるなんて、餘程間の抜けた奴だと見えるね」
そう云った時、少年の咽喉から、かすれた、老人の咳のような、子供らしくない笑いごえが出て、それが異様に屋根うらへ響いた。
「ねえ、どうしてそんな所を斬られたんだろう?」
「でも、あの、これは女首なのでございます」
「女の首?」
「いゝえ、そうではございません、………」