Japanische Klassiker mit Furigana
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ぶしゅうこうひわ
武州公秘話
谷崎 潤一郎
Lesen Sie 武州公秘話 (ぶしゅうこうひわ) von 谷崎 潤一郎 (たにざきじゅんいちろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 107.572 Zeichen · 209 Bildschirme
彼はあの時自分が手にかけて殺した男が果して敵の総大将であったかどうか、まだ本当には分っていなかったのであったが、今朝から急に寄手の勢いが鈍り出したので、さてはやっぱりそうだったのかと、始めて得心が行ったようなものゝ、喜び勇んでその功名を人に語る気にはなれないのであった。子供の時分に、ほんの無邪気な出来心から、ちょっとしたいたずらをしたのが元で思いがけない事件を引き起し、大人たちに大騒ぎをさせるようなことがよくある。そんな場合に、事件の火元は自分であることを教えてやればどんなに皆が助かるか知れないものを、叱られるのが恐かったり、今更云い出しにくかったりして、誰も気が付かないのをいゝ事に、何処迄も知らん顔で済ましてしまう。法師丸もまあそれに似た心持だった。敵の様子が変ったのは自分が昨夜此れ/\のことをしたからだと名告って出れば、味方は俄かに生色を取り返し、無駄な心配から救われる訳でもあり、第一法師丸自身がいかに面目を施すことか、少年の身を以てそんな働きをしたことが知れたら、父輝国や一閑斎はどんなに褒めてくれるであろうか、それを思うと、云い出したくてむず/\するようにもなるのだが、彼の手柄は実に偶然の儲け物で、裏面に潜んでいる耻ずかしい動機が露顕することを考えたら、とても恐ろしくなるのであった。