Japanische Klassiker mit Furigana
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わすれえぬひとびと
武蔵野
国木田 独歩
Lesen Sie 武蔵野 (わすれえぬひとびと) von 国木田 独歩 (くにきだどっぽ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 94.018 Zeichen · 192 Bildschirme
その手のいたくふるえるさまわが目にも知れければ、かの君顧みたまいて始めて怪しと思う色を眼の中に示したまえり。
乗る客、下りる客の雑踏の間をわれら大股に歩みて立ち去り、停車場より波止場まで、波止場より南洋丸まで二人一言も交えざりき。
船に上りしころは日ようやく暮れて東の空には月いで、わが影淡く甲板に落ちたり。卓あり、粗末なる椅子二個を備え、主と客とをまてり、玻璃製の水瓶とコップとは雪白なる被布の上に置かる。二郎は手早くコップに水を注ぎて一口に飲み干し、身を椅子に投ぐるや、貞二と叫びぬ。
声高く応してここに駆け来る男は、色黒く骨たくましき若者なり、二郎は微笑みつ、早く早くと優しく促せり。若者はただいまと答え身を回らしてかなたに去りぬ。二郎、空腹ならずや。われ、物言うも苦し。二人は相見て笑いぬ、二郎が煙草には火うつされたり。
今宵は月の光を杯に酌みて快く飲まん、思うことを語り尽くして声高く笑いたし、と二郎は心地よげに東の空を仰ぎぬ。われ、こしかた行く末を語らば二夜を重ぬとも尽きざらん、行く末は神知りたもう、ただ昨日を今日の物語となすべし、泣くも笑うもたれをはばからんや。