Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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わすれえぬひとびと

武蔵野

国木田 独歩

Lesen Sie 武蔵野 (わすれえぬひとびと) von 国木田 独歩 (くにきだどっぽ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 94.018 Zeichen · 192 Bildschirme

Aozora Bunko

』お梅の声もささやくよう。

『ありがとう。』幸吉は急いで中二階の方へ行った、しかし頭を垂れたまま。お梅は座敷の隅の方の薄暗い所に蹲居で浪花節を聞いていたが、みんなが笑う時でも笑顔一つしなかった。二切りめが済むと座敷はにわかににぎやかになって、煙草を吸うやら便所に立つやら大騒ぎ。

『お梅。』母親がきょろきょろと見回すと、

『なに。』お梅は大きな声で返事をした。

『どこにいたのさっきから。』

『ここで聴いていたのよ、そして頭が痛くって……』と顔をしかめて頭をこつこつと軽くたたく。

『奥へ行って、寝みな、寝てたッて聞こえるよ。』母親は心配そうに言う。それでもお梅は返事をしないでそのまま蹲居でいた。そのうち三切りめが初まるとお梅はしばらく聴いていたが、そッと立って土間へ下りると母親が見つけて、低い声で、

『奥でお寝みな。』半ばしかるように言った。お梅は泣き出しそうな顔をして頭を振って外面へ出た。月は冴えに冴え、まるで秋かとも思われるよう。庭木の影がはっきりと地に印している。足を爪立てるようにして中二階の前の生垣のそばまで来て、垣根越しに上を見あげた。二階はしんとしている。