Japanische Klassiker mit Furigana
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わすれえぬひとびと
武蔵野
国木田 独歩
Lesen Sie 武蔵野 (わすれえぬひとびと) von 国木田 独歩 (くにきだどっぽ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 94.018 Zeichen · 192 Bildschirme
僕はただ夢中になって画いていたが目と手は器械的に動くのみで全身の注意は後ろに集まっていた。すると何者かが確かに僕の背なかにくっつくようにして足を止めた。そして耳のそばで呼吸の気合がする。天下何人か縮み上がらざらんやだ。君のような神経の少し遅鈍の方なら知らないこと――失敬失敬――僕はもう呼吸が塞がりそうになって、目がぐらぐらして来た。これが三十分も続いたら僕は気絶したろう。ところが間もなく、旦那はうめえなアと耳元で大声に叫んだ奴がある。
びっくりして振り向くと六十ばかりの老爺が腰を屈めて僕の肩越しにのぞき込んでいるんだ。僕はあまりのことに、何だびっくりしたじゃアないかと怒鳴ってやッた。渠一向平気で、背負っていた枯れ木の大束をそこへ卸して、旦那は絵の先生かときくから先生じゃアないまだ生徒なんだというとすこぶる感心したような顔つきで絵を見ていた。』
ここまで話して来て江藤は急に口をつぐんで、対手の顔をじっと見ていたが、思い出したように、
『そうだッけ、あの老爺さんを写生するとよかッた、』と言って膝を拍った。この近在の百姓が御料地の森へ入って、枯れ枝を集めるのは、それは多分禁制であろうが、彼らは大びらでやっているのである。