Japanische Klassiker mit Furigana
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さつじんき
殺神記
田中 貢太郎
Lesen Sie 殺神記 (さつじんき) von 田中 貢太郎 (たなかこうたろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 3.120 Zeichen · 7 Bildschirme
唐の開元年中、郭元振は晋の国を出て汾の方へ往った。彼は書剣を負うて遊学する曠達な少年であった。
某日、宿を取り損ねて日が暮れてしまった。星が斑に光っていた。路のむこうには真黒な峰が重なり重なりしていた。路は渓川に沿うていた。遥か下の地の底のような処で水の音が聞えていた。鳥とも蝙蝠とも判らないようなものが、きい、きい、と鋭い鳴声をしながら、時おり鼻の前を掠めて通った。
夜霧がひきちぎって投げられたように、ほの白くそこここに流れていた。車の轍に傷めつけられた路は一条微赤い線をつけていた。その路は爪さきあがりになっていた。高い林の梢の上に微な風の音がしていた。
路は小さな峰の上へ往った。路の上へ出ると元振はちょっと馬を控えた。黒い山の背がやはり前方の空を支えていた。暗い谷間の方へ眼をやった時、蛍火のような一個の微な微な光を見つけた。
「人家だ」
元振は眼を輝かした。人家ならどうにでも頼んで、一晩泊めて貰おうと思った。
馬は勾配の緩い路を静かにおりはじめた。今のさきまで人家のある処まで往こうと思って、それがために気を張っていた少年は、人家を見つけると共に疲労を覚えてきた。