Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

ja-reading.com

Lesen Sie japanische Klassiker online mit Furigana. Filtern Sie nach JLPT-Niveau, tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung und übersetzen Sie einen Satz.

はは

母

芥川 竜之介

Lesen Sie 母 (はは) von Akutagawa Ryūnosuke (芥川 竜之介) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 8.551 Zeichen · 18 Bildschirme

Aozora Bunko

あの汽船はとうに去ったであろう。赤濁りに濁った長江の水に、眩い水脈を引いたなり、西か東かへ去ったであろう。その水の見える波止場には、裸も同様な乞食が一人、西瓜の皮を噛じっている。そこにはまた仔豚の群も、長々と横たわった親豚の腹に、乳房を争っているかも知れない、――小鳥を見るのにも飽きた男は、そんな空想に浸ったなり、いつかうとうと眠りそうになった。

「あなた。」

男は大きい眼を明いた。ハムモックの側に立っているのは、上海の旅館にいた時より、やや血色の好い敏子である。髪にも、夏帯にも、中形の湯帷子にも、やはり明暗の斑点を浴びた、白粉をつけない敏子である。男は妻の顔を見たまま、無遠慮に大きい欠伸をした。それからさも大儀そうに、ハムモックの上へ体を起した。

「郵便よ、あなた。」

敏子は眼だけ笑いながら、何本か手紙を男へ渡した。と同時に湯帷子の胸から、桃色の封筒にはいっている、小さい手紙を抜いて見せた。

「今日は私にも来ているのよ。」

男はハムモックに腰かけたなり、もう短い葉巻を噛み噛み、無造作に手紙を読み始めた。敏子もそこへ佇んだまま、封筒と同じ桃色の紙へ、じっと眼を落している。