Japanische Klassiker mit Furigana
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はは
母
Lesen Sie 母 (はは) von Akutagawa Ryūnosuke (芥川 竜之介) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 8.551 Zeichen · 18 Bildschirme
女中は何とも云われなかったら、女のいる事も気がつかずに、そのまま通りすぎてしまったかも知れない。が、女は女中の姿を見ると、心安そうに声をかけた。
「お清さん。」
女中はちょいと会釈してから、出窓の方へ歩み寄った。
「まあ、御精が出ますこと。――坊ちゃんはどうなさいました?」
「うちの若様? 若様は今お休み中。」
女は編針を休めたまま、子供のように微笑した。
「時にね、お清さん。」
「何でございます? 真面目そうに。」
女中も出窓の日の光に、前掛だけくっきり照らさせながら、浅黒い眼もとに微笑を見せた。
「御隣の野村さん、――野村さんでしょう、あの奥さんは?」
「ええ、野村敏子さん。」
「敏子さん? じゃ私と同じ名だわね。あの方はもう御立ちになったの?」
「いいえ、まだ五六日は御滞在でございましょう。それから何でも蕪湖とかへ、――」
「だってさっき前を通ったら、御隣にはどなたもいらっしゃらなかったわよ。」「ええ、昨晩急にまた、三階へ御部屋が変りましたから、――」
「そう。」
女は何か考えるように、丸々した顔を傾けて見せた。
「あの方でしょう? ここへ御出でになると、その日に御子さんをなくなしたのは?」