Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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すいごういぶん

水郷異聞

田中 貢太郎

Lesen Sie 水郷異聞 (すいごういぶん) von 田中 貢太郎 (たなかこうたろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 17.516 Zeichen · 36 Bildschirme

Aozora Bunko

野本はその茶碗を持って蹲んだ。

「奥さん、どんなことがあるか知りませんが、山根君に悪いことがあるなら、私が忠告します、おあがりなさい、飲んで吐くが好いのです」

細君はその水を飲みだした。省三はその傍へ坐って悲痛な顔をしてそれを見ていた。

赧ら顔の医師が薬籠を持ってあがって来た。医師は細君の傍へ往って四辺の様をじっと見た。

「吐きましたね」

「吐いてます、まだ吐かしたら好いと思って、今この茶碗に一ぱい水を飲ましたところです」

野本は手にしていた茶碗を医師に見せた。

「それは大変好い」

医師は今度は細君の方を向いて云った。

「奥さん、大丈夫ですよ、御心配なさらないが好いのですよ」

細君は声をあげて泣きだした。

「先生お恥かしゅうございます」

省三はやっとそれきり云って眼を伏せた。

「どれくらいになりますか」

「私が気がついて、まだ二十分ぐらいにしかならんと思いますが」

「そうですか」

医師は薬籠を開けて小さな瓶を出し、それを小さな液量器に垂らした。

「水を持って来ましょうか」

野本が云った。

「そうですね、すこしください」

野本は茶碗を持って台所の方へ往ったがやがて水を汲んで帰って来た。