Japanische Klassiker mit Furigana
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すいごういぶん
水郷異聞
田中 貢太郎
Lesen Sie 水郷異聞 (すいごういぶん) von 田中 貢太郎 (たなかこうたろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 17.516 Zeichen · 36 Bildschirme
「大丈夫ですよ、私が呼んでありますから」
「ほんとうですか」
「ほんとうですとも、そこをおりましょう」
川風に動いている丈高い草が一めんに見えていて、路らしいものがそのあたりにあるとは思われなかった。
「おりられるのですか」
「好い路がありますわ」
省三は不思議に思ったが、女が断言するので土手の端へ往って覗いた。そこには一幅の土の肌の見えた路があった。
「なるほどありますね」
「ありますとも」
省三は前にたってその路をおりて往った。蛍のような青い光が眼の前を流れて往った。
「蛍ですね」
「さあ、どうですか」
黄ろな硝子でこしらえたような中に火を入れたような舟が一艘蘆の間に浮いていた。
「おかしな舟ですね、ボートですか」
「なんでも好いじゃありませんか、あなたを待ってる舟ですよ」
そんな邪慳な詞は省三はまだ一度も女から聞いたことはなかった。彼は女はどうかしていると思った。
「お乗りなさいよ」
「乗りましょう」
省三は舟を近く寄せようと思って纜を繋いである処を見ていると、舟は蘆の茎をざらざらと云わして自然と寄って来た。
「お乗りなさいよ」
「綱は好いのですか」
「好いからお乗りなさいよ」