Japanische Klassiker mit Furigana
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すいめんにうかんだおんな
水面に浮んだ女
田中 貢太郎
Lesen Sie 水面に浮んだ女 (すいめんにうかんだおんな) von 田中 貢太郎 (たなかこうたろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 4.721 Zeichen · 10 Bildschirme
半鐘の音はその暴風雨の中にきれぎれに響いた。郡奉行の平兵衛は陣笠陣羽織姿で川縁へ出張して、人夫を指揮して堤防の処どころへ沙俵を積み木杭を打ち込ましていた。
篝火が堤防のあっちこっちに燃えていた。その篝火は直ぐ雨のために小さくなった。篝火に照らされて人夫の乗った舟の舳や、艪を漕いでいる人の顔などが折おり見えた。
夜明けに近くなった。雨は止んでしまったが風は未だ強かった。平三郎も父といっしょに川縁へ出ていた。平三郎は鉢巻をし裾をからげて、人夫といっしょに沙俵を運んだり、舟へ乗って堤防を見廻ったりした。
夜が明けて来た。それとともに風も止んで来たが水は増すばかりであった。平兵衛の乗った舟と平三郎の乗った舟は、堤に添うて上流の方へ漕いでいた。平三郎は舳へ腰を掛けていた。その舟には四人の人夫が乗っていた。平三郎は何かの拍子に舟の右側へ眼をやった。一人の女の死体が不意に浮いて来た。面長な顔の女で黒い眼をぱっちり開けていた。平三郎は驚いた。平兵衛の舟がその右側を漕いでいた。平兵衛は舟の胴の間に衝立って上流の水の勢を見ていた。
「父上、父上、昨夜の女が、女が浮きました」