Japanische Klassiker mit Furigana
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すいめんにうかんだおんな
水面に浮んだ女
田中 貢太郎
Lesen Sie 水面に浮んだ女 (すいめんにうかんだおんな) von 田中 貢太郎 (たなかこうたろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 4.721 Zeichen · 10 Bildschirme
平兵衛は平三郎の声を聞いて左側の水の上を見た。見覚えのある女の顔であった。両方の舟に乗っている人夫等も同時にそれを見た。女の体はそのまま沈んで往った。
「父上、昨夜の女はあれでございます」
平三郎は声を震わして云った。
「そうか」
平兵衛はこう云って平三郎の顔を見たが忽ち大声に笑いだした。
「この水では、一人や二人は、死ぬるだろうて」
平三郎の舟の舳が何かに下から衝きあげられたように持ちあがりかけた。平三郎も人夫達も材木のようなものにでも乗りかけたのではないかと思った。人びとは艫の方へ体を崩されてしまった。その拍子に舟が左に傾いてそのまま顛覆してしまった。平兵衛の舟では直ぐ見つけた。
「若旦那の舟が」
平兵衛の舟は直ぐその方へ舳を向けた。下から登って来ていた二三艘の舟も直ぐそれを見つけた。顛覆した舟の傍には二三人の人夫の頭が浮いた。平兵衛の舟へはその二つの頭が近づいて来て舳の小縁へその手がかかった。下から来た舟の方へも二つの頭が近づいていた。平兵衛は平三郎の頭に注意した。
「若旦那が見えん」
他の四人は皆出て来た。
「若旦那は、舟に伏せられておるのじゃ」
舟底を見せて下へ下へと流れて往く舟を目がけて、平兵衛の舟は漕いで往った。