Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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こおりぐらのにかい

氷蔵の二階

宮本 百合子

Lesen Sie 氷蔵の二階 (こおりぐらのにかい) von 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 18.201 Zeichen · 37 Bildschirme

Aozora Bunko

「一寸! いやなひと、忘れたの?」

房は瞬間仏頂面で視た。

「――まあ、あなた」

彼女は、俄に気が和むと一緒に、何と挨拶してよいか判らない感動に打たれた。

「まあ――どうしてわかって?――でも、まあ、本当に、こんな処で会おうとは思わなかった!」

志野の方は、房に比べればずっと落付き、

「さっきね、ふいとここを通りがかると、何だかあなたみたいな人がいるだろ、私、まさかと思ってね、でも念のためだと思って傍へよって見ると、矢張りあなたなんだもの――」

補習科時代からすると、別人のように志野は女らしくなっていた。房々軟かそうな黒褐色の前髪を傾け、彼女はさもおかしそうにメリンス羽織の肩をすくめて笑った。

「――あの顔ったら――昔の通りね」

――房は、帰る時間は気になるし、この思いがけない廻り合いを、これぎり打ちきる気はなし、せき込んで訊ねた。

「あなた、そいで今どこにいるの?」

「私?――あなたは?」

「私はついそこの坂を登りきって左へ入った処よ――須田さんて家」

「なあんだ、あすこ? あすこなら毎日通ってるわ――私、電話局に通ってるのよ、停留場んところの氷屋に間借りして……」