Japanische Klassiker mit Furigana
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かごつるべ
江戸情話集
岡本 綺堂
Lesen Sie 江戸情話集 (かごつるべ) von 岡本 綺堂 (おかもときどう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 203.779 Zeichen · 407 Bildschirme
それが七、八日はまず無事にすごしたが、こういううしろ暗いことをしているのは、根が正直の母子に取って堪えられない苦痛であった。かれらは急に世間が怖ろしくなった。物の音にも胸をはずませて、おびえた心持ちで日を送ることが多かった。かれらは明るい夏の日の光りを見るのを恐れて、いつまでもこの暗い天気がつづけばいいと祈っているようになった。
それに付けても、その後の廓の模様が知りたかった。馬道に住んでいる廓まわりの女髪結の一人を、お時はかねて識っているのを幸いに、これを訪ねてよそながら様子を探ろうと、彼女は雨の小やみを待って午過ぎから出て行った。
空を染めている薄墨の色も少し剥げて、ちぎれて迷う雲の間から、時どき思い出したようにうす明かるい初夏の光りが洩れた。しめり切って重そうにうなだれている庭の若葉は、そよ吹く風に身ぶるいをして青いしずくを振るいおとした。田圃でも池でも蛙がまた鳴き出した。十吉は縁に腰をかけて、濡れた土に三つ四つころげている青梅の実を眺めていたが、やがてふいと眼をあげて表を見た。
まばらな竹籬の外に立って、お米は息を殺したようなふうで一心に内を覗いていた。