Japanische Klassiker mit Furigana
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かごつるべ
江戸情話集
岡本 綺堂
Lesen Sie 江戸情話集 (かごつるべ) von 岡本 綺堂 (おかもときどう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 203.779 Zeichen · 407 Bildschirme
いつもは遠慮なしにはいって来るのに、きょうは竹籬を境にして迂闊に庭へ踏み込もうとはしなかった。十吉があごで招いても、彼女は無言で情なく頭をふった。
「おっかさんはいない。おはいりよ」と、十吉は小声で呼んだ。が、お米はやはり拗ねたようにためらっていた。
十吉は低い下駄を突っかけて、庭の水溜りを蛙のように飛び越えながら竹籬の外へ出た。そうして、まだ素直に来そうもないお米の手を取って、無理に内へ連れ込んで来たが、お米はやはり立ったままで縁に腰をおろそうともしなかった。
「この頃ちっとも来なかったね」
「来るとお邪魔だろうと思って……」と、お米はことし十六の小娘に似合わない、怖い眼をして十吉を睨んだ。その眼がしらには涙が浮いていた。
十吉には理屈が判らなかった。
「どうかしたの」と、彼は不思議そうにお米の顔をのぞくと、相手は顔をそむけて手拭を眼に当てた。すすり泣きをしているらしい。十吉も手が着けられなかった。しかし、打っちゃっても置かれないので女の肩に手をかけて無理に縁に押し据えて、いろいろに宥めながら子細を訊くと、お米の小さい胸には思いも付かない妬みの火が燃えていた。