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Japanische Klassiker mit Furigana

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かごつるべ

江戸情話集

岡本 綺堂

Lesen Sie 江戸情話集 (かごつるべ) von 岡本 綺堂 (おかもときどう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 203.779 Zeichen · 407 Bildschirme

Aozora Bunko

綾衣は実にお米と十吉とを妬ましいほどに羨ましく思った。彼女は時どきに団扇の手を休めて、二人のささやきに耳を引き立てた。

怨む、怒る、泣く、笑う、それが覗きからくりのように瞬くうちに変ってゆく若い同士の埒なさを、綾衣はただ馬鹿らしいとばかりは思えなかった。外記と馴染みそめたその当座は、自分たちの間にもそうしたおさない他愛ない痴話や口説の繰り返されたことを思い出して、三年前の自分がそぞろに懐かしくなった。

「盂蘭盆が過ぎたら……」と、十吉の声がきこえた。

「家のおっかさんもそう言っていた」と、お米の声も低くきこえた。

盂蘭盆が過ぎたらいよいよ祝言をするというのではあるまいかと、綾衣は想像した。自分はその盂蘭盆まで生きていられる命だろうか。綾衣の肉は微かにおののいた。剣難の相があると言われたことも今更のように思い出された。

遠くで雷の音がひびいた。かみなり嫌いの綾衣はいよいよ神経が鋭くなった。

自分にも恋はある。あの子供らしい人たちがもっているのよりも、更に深い強い実の入ったものをもっている。なんでよその恋が羨ましかろう。妬ましかろう。しかし自分たちは蜘蛛の巣にかかった蝶や蜻蛉のように、苦しい、切ない、むごい、やがては命をとられそうな怖ろしいきずなに手足をくくられて悶いている。