Japanische Klassiker mit Furigana
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かごつるべ
江戸情話集
岡本 綺堂
Lesen Sie 江戸情話集 (かごつるべ) von 岡本 綺堂 (おかもときどう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 203.779 Zeichen · 407 Bildschirme
お絹はいよいよ寂しくなった。
「君ちゃん。なんだか陰気だから、そこの窓をおあけよ」
お君があけた肱掛け窓から秋の夜風は水のように流れ込んだ。となりの露地口の土蔵の白壁は今夜の月に明かるく照らされて、屋根の瓦には露のようなものが白く光っていた。お絹は林之助が発句を作ることをふと思い出した。あしたの晩は月を観て「名月や」などと頻りに首をひねることだろうと可笑しいようにも思われた。それとなくお里と約束して、どこへか月見にでも行くだろうかと、急に腹立たしくもなった。
こんな子供を相手にしても仕方がないと思いながらも、お絹はおみくじを探るような気でお君に訊いてみた。
「お前、林さんが不二屋へ行くと思うかい。そうして、あのお里さんと仲よくしていると思うかい」
「そんなこと知りませんわ」と、お君は食べかけた鰻のしっぽを口から出したり入れたりしながら答えた。「だけれども、そんなことはないでしょう。誰だって本当に見た人はないんですもの。お花さんは誰のことでもそう言うんですから」
お花にそんな癖のあることは事実であった。男と女とが少し馴れなれしく詞をかわしていると、お花は必ずこれを意味ありげに解釈しなければ気が済まなかった。