Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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かごつるべ

江戸情話集

岡本 綺堂

Lesen Sie 江戸情話集 (かごつるべ) von 岡本 綺堂 (おかもときどう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 203.779 Zeichen · 407 Bildschirme

Aozora Bunko

林之助とお里との名を結びつけて、お絹の前に黒い影を投げ出したのもお花が第一の口切りであった。しかしお花が自分に対してそんな無責任な嘘をつこうとは、お絹もさすがに信じられなかった。

「嘘ですよ。きっと嘘ですよ」と、お君は鰻をのみ込んでしまってまた言った。

子供は正直である。正直なお君の口からこういう保証の詞をきかされて、お絹は頼りないなかにも何だか心強いようにも感じた。

苦い酒も無理に飲んでいるうちに幾らか酔いがまわってきて、自分ひとりでくよくよ考えていても詰まらないというような浮いた気も起った。このあいだから自分の小屋へ足ちかく見物にくる若旦那ふうの男があって、それは浅草の質屋の息子だとお花が話したことも思い出された。その男もまんざらの男振りではないなどとも考えた。自分が舞台から情のこもった眼を投げれば、かれを捕虜にすることはさのみむずかしくもないというような、一種の誇り心も起った。そうは思っても、やはり林之助が恋しかった。

お絹とお君が夜露にぬれて一つ目の家へ帰り着いたのは、その夜の五つごろ(午後八時)であった。家には毎日留守番をたのむ隣りのお婆さんが眠そうな眼をして待っていた。