Japanische Klassiker mit Furigana
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かごつるべ
江戸情話集
岡本 綺堂
Lesen Sie 江戸情話集 (かごつるべ) von 岡本 綺堂 (おかもときどう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 203.779 Zeichen · 407 Bildschirme
どうしたんでしょう。迎いの人の口ぶりじゃあもういけないらしいんですよ」と、お染も顔をしかめて言った。「その話を聞くと、可哀そうに里ちゃんはわあっと泣き出して……。あの子ふだんから親孝行なんですからね。いよいよいけないとなったら、さぞがっかりするでしょう」
「そりゃあ気の毒だね」
弥太郎もさすがに顔の色を陰らせた。林之助は茶碗を持っている手さきがふるえた。病身とはかねて聞いていたが、現に先月末の花火の晩には近所の百万遍の数珠を繰りに行ったお里の母が、きょう俄かに死にそうな大病に取りつかれるとは、あんまり果敢ないように思われた。その母の枕もとに親孝行のお里が取り乱して泣いている、いじらしい姿もすぐに彼の眼にうかんだ。
「虫が知らすとでも言うんですかしら。里ちゃんはこの二、三日なんだかぼんやりしていて、唯うっとりとうしろの川の水を眺めていたりして、人が声をかけても返事をしないこともあるんですよ。今思うと、やはりこんなことがある前兆だったのかも知れませんね」と、お染はまた言った。
お里がこの二、三日物思わしげに暮らしたのは、母に別れる前兆であったろうか。なんにも知らないお染が一途にそう解釈するのは無理もなかった。