Japanische Klassiker mit Furigana
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えどげいじゅつろん
江戸芸術論
永井 荷風
Lesen Sie 江戸芸術論 (えどげいじゅつろん) von 永井 荷風 (ながいかふう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 85.130 Zeichen · 167 Bildschirme
古今の浮世絵にして男女相愛の様を描きしもの枚挙に遑あらず。然れども春信の板画の如く美妙に看者の空想を動すものは稀なり。春信の板画は布局設色相共に単純を極む。その人物は製作の年代に従ひ結髪に多少の差を見るといへどもいづれの画においても常に同一の容貌をなし、年齢身分等の差別のみか時には男女の判別さへ僅にその衣服と髷とによりてこれを知るに過ぎず。さればかの黒色と白色との強き対照によりて有名なる雪中相合傘の図の如きは両個の人物共に頭巾を冠れるがため男女の区別全く判明しがたきものとはなれり。春信の描く処の男子は尽く前髪ある美少年にして、女子は必ず長大なる一枚の櫛をさしたる島田あるひは笄髷に結び、差髱長く後に突出したる妙齢のものたり。しかしてこれら人物の姿勢も容貌に等しく常に一定の典型に陥れるのみならず写生に遠ざかる事むしろ甚しきものあり。
凡芸術の制作に関するや、殊に東洋の美術において、科学の知識の必要なるや否やにつきては容易に断言する事能はざるものあり。春信の板画の幽婉高雅にして詩味に富めるはむしろ科学の閑却に基けるものの如し。春信の男女は単にその当時の衣服を着するのみにしてその感情においては永遠の女性と男性とに過ぎざるなり。