Japanische Klassiker mit Furigana
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かいじんにいのる
海神に祈る
田中 貢太郎
Lesen Sie 海神に祈る (かいじんにいのる) von 田中 貢太郎 (たなかこうたろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 12.486 Zeichen · 26 Bildschirme
「それがなかなかそういきませんから、漁師は昔から貧乏と相場が定まっておりますよ」
「そうか、そうかも知れん」
一行は室津の部落を離れて浮津の部落へかかっていた。其の時、右側の漁師の家から小さな老人が出て来て空を見た。
「さにしがせりよる、朝のうちに一網やろうか」
それは地曳網を曳こうと云っているところであった。そして、権兵衛と総之丞が近ぢかと寄って往くと、老人は驚いたようにして家の内へ入って往ったが、家の中から、
「普請方のお役人が帰よる」
と云う声が聞えた。総之丞は笑った。
「御存じでございませんか、今の男は、夫役に来て縄を綯うておりました者でございますが」
「そうか気が注かざったが、彼の鼻のひしゃげた老人か」
老人かと云うなり権兵衛は体を崩して倒れてしまった。総之丞は驚いて駈け寄った。
「如何なされました」
権兵衛は右脇を下にして倒れていた。
「一木殿、気を確に一木殿」総之丞は蹲んで権兵衛の肩へ手をかけて、「如何なされました」
権兵衛は体をくねらすなり俯向きになった。
「五体が痺れた」
「痺れた、御病気でございますか」
「病気かも知れんがおかしいぞ」
「何か食物の啖いあわせではございますまいか」