Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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かいじんにいのる

海神に祈る

田中 貢太郎

Lesen Sie 海神に祈る (かいじんにいのる) von 田中 貢太郎 (たなかこうたろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 12.486 Zeichen · 26 Bildschirme

Aozora Bunko

外はまだ微暗かったが、さすがに大気は冷えていた。権兵衛は二匹の馬に手荷物を積み、二三の下僚を伴れていた。下僚の中には総之丞もいた。

権兵衛は悩まされた釜礁が除れて、工事が思いの外に捗り、間もなく竣成したので、高知の藩庁に報告する必要から、急いで引きあげて往くところであった。其の時権兵衛が新港開鑿に要した夫役は一百七十三万人役で、費用は十万二千五百両であった。それは野中兼山が寛永の古港を改修して、中掘普請と云っているに対して次普請と云われた。其の港は今、室津港と云われている。

沖の方が荒れているのか、波の音に狂いがあった。権兵衛は並んで歩いていた総之丞に声をかけた。

「今日は暑いぞ」

「そうでございますよ、彼の波の音が曲者でございますよ」

「そうじゃ、波の音がいかんぞ」

砂路の右側には藁葺の小さな漁師の家が並び、左側には荻や雑木の藪が続いていた。漁師の家にはもう起きて火を焚いている処があった。

「やっぱり早いな」

「これまで、普請で、仕事がありましたが、これから当にならん漁に出んとなりませんから、気が気じゃございませんよ」

「其のかわり漁があれば、一日で一箇月分の夫役になるじゃないか」