Japanische Klassiker mit Furigana
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しせい
消えた受賞作 直木賞編
富田 常雄
Lesen Sie 消えた受賞作 直木賞編 (しせい) von 富田 常雄 (とみたつねお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 17.806 Zeichen · 36 Bildschirme
「全く驚き入りました。申訳け御座いません。併し、御前、こんなふしだらな事を致しましたのも、要するに青木が、肺病の前途を悲観して、奈世を誘ったものでございましょう。お詫びの申上げようもございません」
杉山はそう言って幾度か溜息をついた。
「抱合心中というのは、必ず、男が上になって流れつくと言うが、そういうものか」
「へっ?」
不意を衝かれたのか、わしの質問が意外だったのかはわからぬが、杉山はきょとんとして訊き返した。わしにして見れば、そんな死方をした娘に未練はないという強い気持が見せたかった。
「さあ、波に打ち揚げられました時の様子は聞いて居りませんが、いずれが上やら、下やら。ともかく、御前、ご不自由でございましょう、早速、お側の小間使いを探がさせますがこの時世ではなかなか……」
夜になって、杉山が東京へ帰る挨拶に来た時、葬式のことは二人の郷里から身内が来磯して後にやる旨を報告した。
「なにか、二人は一緒に置いてあるのか」
わしは訊いてみた。
「いえ、青木は園丁小屋の方に、奈世は爺やの家の方に置いてございます」
「そうか、通夜はやってやるのだろうな」
「はい、二人とも、なかなかお邸内では人気がございましたもので」