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Japanische Klassiker mit Furigana

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りんらくのこうじょのおぼえがき

淪落の皇女の覚書

久生 十蘭

Lesen Sie 淪落の皇女の覚書 (りんらくのこうじょのおぼえがき) von 久生 十蘭 (ひさおじゅうらん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 28.649 Zeichen · 56 Bildschirme

Aozora Bunko

十九歳か廿歳。それ以上ではあるまい。病身らしい、見るからに弱々しそうな感じで、顔色などはすき透るように白く、足が悪いのか、姉らしい二十四、五の娘に手をとられながら、毎朝きまった時間にボナパルト街のほうからレミュの隣のベンチへ掛けにくる。姉は勤めを持っているらしく、弟をただならぬ愛情で抱擁すると、急ぎ足で公園から出て行き、夕方、ほとんどおなじ時間に早足で入ってきて、朝のように弟を抱きしめ、手をひきながらゆっくり帰って行く。日曜と雨の日以外はこの情景が機械のようにくりかえされた。

姉のほうも思いに残るような器量よしだが、青年のほうは、レミュが今まで、見も、感じも、想像もしたことがなかったような、いうにいえぬ美しさと優しさを身につけたボオ・ブランメェルだった。レミュを驚かせたのはそのことだけではなく、陽の光を仰ぐか、足もとの矢車草の花に眼を移すか、その程度の動きを見せるほか、朝、掛けたときの恰好のまま夕方まで身動きひとつしないことだった。植物さながらの閑寂さで、はじめの二、三日は呆気にとられて脇から眺めていたが、どうしたって幸福だとは思えないこの青年と、思うさま打明け話をしてみたいと思うと、それが気にかかってまわりの景色が眼に入らなくなってしまった。