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Japanische Klassiker mit Furigana

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りんらくのこうじょのおぼえがき

淪落の皇女の覚書

久生 十蘭

Lesen Sie 淪落の皇女の覚書 (りんらくのこうじょのおぼえがき) von 久生 十蘭 (ひさおじゅうらん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 28.649 Zeichen · 56 Bildschirme

Aozora Bunko

それから三日ばかりの後、レミュがとうとう話しかける機を掴んだ。その青年はジョルジュ・ドオルセェというベルギー生れの医者の息子で、両親が死んだ後、姉のジャンヌと二人で巴里へ出てきて、ボナパルト街のアパルトマンの地下の一と間に住んでいるが、脚が悪いので働けず、リュウ・ド・リヴォリの婦人帽子商の売子をしている姉の厄介になっているということを、いかにもまずい言いまわしでたどたど話してきかせてから、「ねえ、あなた」と人懐っこくレミュの腕に手をかけながら、「それであなたはどういうわけでここへやってくるんですか」とやさしくたずねかえした。

他人の愛情に飢えきっている都会馴れない田舎ものの常で、レミュは嬉しさのあまりしどろもどろになり、自分が毎日どんなひどい食べものに耐え、友もなく、慰めもなく、見捨てられた貝殻のような、どんな辛い、孤独な日々を送っているかと涙をうかべながら語った。

その日は姉のジャンヌがいつもより早く迎いに来たので、残り惜しくも別れたが、索寞たる巴里のまん中で、めぐり逢うとも思っていなかったやさしげな情性に触れたよろこびでレミュは酔ったようになり、非現実の姿のまま心の中に残っているジョルジュの悌に話しかけ、独り笑いをし、まんじりともせずに夜を明かしてしまった。