Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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りんらくのこうじょのおぼえがき

淪落の皇女の覚書

久生 十蘭

Lesen Sie 淪落の皇女の覚書 (りんらくのこうじょのおぼえがき) von 久生 十蘭 (ひさおじゅうらん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 28.649 Zeichen · 56 Bildschirme

Aozora Bunko

翌日、レミュが勤めから帰ると、机の上に紙包みとジャンヌの手紙が載っていた。

「これはつまらぬ私の覚書ですが、こんなものが一字一スウぐらいにも売れるものなら売って、それでなにか要用のものでも買ってください。ジョルジュにしてくだすったご親切に、なにかお返しをしたいのですが、差上げるようなものはなにもありません。これだけが私に出来るたったひとつのことです」

パリ 七・十二・二四

タチアナ・アレクサンドロゥチ・ニコロゥナ

父はどなたもがおっしゃるように意志の弱いひとでしたが、人間として憎悪されるようなところはなかったと思います。平易なおだやかな心もち、ロシアの政治を改革することにも冷淡ではなかったのですが、周囲の旧勢力に自由な意志の発動をおさえられ、それが度重ったので、隠忍することに独特な生き方を見いだす消極的なひとになってしまいました。

十九世紀以後の歴代のロシア皇帝はみな不幸でしたが、そのうちでも父の運命は希臘悲劇にも似た、眼もあてられぬような惨憺たるものでした。父の悲運のはじまりは、資質も力もないうちに望んでもいない皇位につかなければならなかったことと、心の冷やかな、手に負えないほど我意の強い、国民性も血の系統もちがう外国の女性と結び合わされたことだったように思います。