Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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りんらくのこうじょのおぼえがき

淪落の皇女の覚書

久生 十蘭

Lesen Sie 淪落の皇女の覚書 (りんらくのこうじょのおぼえがき) von 久生 十蘭 (ひさおじゅうらん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 28.649 Zeichen · 56 Bildschirme

Aozora Bunko

それでも自分のあやまちにすこしは気がつくのだとみえ、

「あのとき気がついていたら。知っていたら」と独語をいっていることもありました。母の愚痴の種は父が無気力で闘争心のないこと。とりわけ退位のとき父がとった態度のことです。

「もっと争うべきだったのよ。争う力がなかったら、せめてうんと条件をつけるべきだったんです。なにひとつ条件をつけずに、革命屋どもに鷹揚に皇位をやってしまうなんて気ちがい沙汰よ。ニコラスはあまりお人好しで弱すぎるんです。ああ、あたしがその席にいたら……ほんとうにそこにいたら」

そうかと思うと、急に元気をなくして、近侍のナリーシュキン伯爵夫人に、「あたしたちはもうなにもしてもらえないのね。ロシアにはもう友達というものがなくなったんだとみえるわね」などといい、そのくせペテルブルグへ帰れるという希望はもっていて、「なにもかもそのうちによくなるでしょう」と落着きはらった顔でいったりしました。

私達、姉のオリガ、妹のアナスタジア、弟、私の四人はエカテリネンブルグへは行きませんでした。五月二十二日の朝、馬車に乗せられ、はじめ父たちが行くはずだったウハへ送られました。