Japanische Klassiker mit Furigana
ja-reading.com
Lesen Sie japanische Klassiker online mit Furigana. Filtern Sie nach JLPT-Niveau, tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung und übersetzen Sie einen Satz.
しんやのしちょう
深夜の市長
海野 十三
Lesen Sie 深夜の市長 (しんやのしちょう) von 海野 十三 (うんのじゅうざ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 109.982 Zeichen · 220 Bildschirme
ときどき円タクのヘッドライトがピカリと向うの辻に閃くばかりで、こっちの方まではやってこない。この広い大道を濶歩してゆくのは、ただ自分ひとりだった。なんという勿体ない通り路であろうか。なんという豪快な散歩であろうか。踉めいて歩こうが、眼をつぶって歩こうが、それとも後向きに歩こうが、誰も何ともいうものがなく、号笛を鳴らして神経をやたらに刺戟するものもいないのである。これが昼間、足の踏み入れようもないほど、喧騒を極めたあの柳島の通りであろうか。交通標示器をちょっと見誤ればたちまち自動車の車輪をわが血でもって染めなければならないあの昼間のT市と同じ市街なのであろうか。否々、これは全く別の座標の上に立っている別の市街なのだ。
僕は深夜の散歩を好むのあまり、饒舌を弄しすぎたようである。だが、その夜更けて、始めて会う機会をもった「深夜の市長」のいうところに比べると、僕の喋っていることなんか、赤ン坊の寝言に等しいのだ。「深夜の市長」こそは、僕の云わんとするところをハッキリ云い、そして僕が平生求めようとして求め得なかったものを無造作に持っているという正に驚嘆すべき畸人だった。