Japanische Klassiker mit Furigana
ja-reading.com
Lesen Sie japanische Klassiker online mit Furigana. Filtern Sie nach JLPT-Niveau, tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung und übersetzen Sie einen Satz.
しぶやけのしそ
渋谷家の始祖
宮本 百合子
Lesen Sie 渋谷家の始祖 (しぶやけのしそ) von 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 68.023 Zeichen · 133 Bildschirme
生活そのものを、火花を散らす激烈なものとして考えていない正隆は、総てを、程々な生温(なまぬ)るさで味っているのである。善と、人が呼ぶものに対して、燃える感激を持たない彼は同時に、悪と呼ぶ者に対して、寛大な、或は無関心な主人であった。
多くの人々が、そうして、一日一日を送っているように、善と悪との、互い違いの出現を一重隔てた彼方に眺めて、薄すりとした暖みを、あらゆる相互関係に感じているのである。よいことも、また、悪いことも、それ等は、総ての幸、不幸、運、不運を包合して、錯綜しつつ起るものではあっても、絶対の自分の安定には、要するに、微力な影翳(かげ)となるに過ぎないと思い込んでいた正隆は、愈々、その信念を、試みられようとする時になって、殆ど、根本的な打撃を与えられた訳なのである。
性格の持つべき力の欠乏から、正隆は、生命を賭しても敢行した、真実さの爆発に対しては、弱い、皮肉な冷笑を以て齎しながら、所謂人情の、交感的な微温(ぬくもり)を否定することは出来なかった。
その人肌の微温を四囲に感じていればこそ、始めて、正隆には息がつけた。彼の冷笑は、決して、故意に自分を陥入れようとする奸策に向ってまで、平然と放たれるほど、力強いものではなかったのである。