Japanische Klassiker mit Furigana
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しぶやけのしそ
渋谷家の始祖
宮本 百合子
Lesen Sie 渋谷家の始祖 (しぶやけのしそ) von 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 68.023 Zeichen · 133 Bildschirme
彼が考えた、羨望というものは、単に彼の幸福と、その他あらゆる彼の仕合わせを裏書きするものとしてのみ現われたのである。
奸策――。正隆は、急に世の中が寒くなったような眼を挙げて未亡人を眺めた。奸策。彼の、贅沢な、物懶い横目では、もうどうにも、負わされない一種の力、何か不気味に因縁的な、陰気な意地悪いものが、心の奥からしんしんと湧き上って、自分の周囲を立ちこめるのを感ぜずにはいられなかったのである。正隆は、今まで、ほのかに、柔らかく、甘えつつ馬鹿にしていた世の中というものに、運命のような畏怖すべき何物かを感じた。
その掴めない、形の定らない、それでいて、何をするか解らない予感は、正隆を、ぞっとさせる。母未亡人の説明通りだとも、信じ兼ねながら、そうかといって、それを拒絶するだけの、証を自らに持たない正隆は、不安な、落付かない懸念(アンキザエティー)の横木に、吊り上げられた。が、然し、彼は、もう後へ引くことは、不可能な心持がした。
翌日、正隆は幾個かの荷物と一緒に、校長の副島氏に贈るべき、大花瓶の箱を抱いて、南に下ったのである。
三
母未亡人の、単に比喩ではなく、呪うべき警告に、ぞっと心を縮めながらも、まだ若い正隆は、さすがにこれから自分を迎えようとする圏境には、多少の光輝を認めずにはいられなかっ