Japanische Klassiker mit Furigana
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うずまけるからすのむれ
渦巻ける烏の群
黒島 伝治
Lesen Sie 渦巻ける烏の群 (うずまけるからすのむれ) von 黒島 伝治 (くろしまでんじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 17.240 Zeichen · 35 Bildschirme
彼は、その軒の下で暫らく佇んでいた。
「ガーリヤ!」
そして、また、硝子を叩いた。
「何?」
女が硝子窓の向うから顔を見せた。唇の間に白い歯がのぞいている。それがひどく愛嬌を持っている。
「這入ってもいい?」
「それ何?」
「パンだ。あげるよ。」
女は、新聞紙に包んだものを窓から受取ると、すぐ硝子戸を閉めた。
「おい、もっと開けといてくれんか。」
「……室が冷えるからだめ。――一度開けると薪三本分損するの。」
彼女は、桜色の皮膚を持っていた。笑いかけると、左右の頬に、子供のような笑窪が出来た。彼女は悪い女ではなかった。だが、自分に出来ることをして金を取らねばならなかった。親も、弟も食うことに困っているのだ。子供を持っている姉は、夫に吸わせる煙草を貰いに来た。
松木は、パンを持って来た。砂糖を持って来た。それから、五円六十銭の俸給で何かを買って持って来た。
でも、彼女の一家の生活を支えるには、あまりに金を持っていなすぎる。もっとよけいに俸給を取っている者が望ましい。
肉に饉えているのは兵卒ばかりではなかった。
松木の八十五倍以上の俸給を取っているえらい人もやはり貪慾に肉を求めているのであった。