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Japanische Klassiker mit Furigana

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おんしつのこい

温室の恋

国枝 史郎

Lesen Sie 温室の恋 (おんしつのこい) von 国枝 史郎 (くにえだしろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 11.010 Zeichen · 22 Bildschirme

Aozora Bunko

「ね、いい子だからお着けなさいよ。料理人の季参が喜びますからね」

で私は着ることは着たものの決して愉快ではありませんでした。「どうして料理人なんかのご機嫌をああして執らなければならないのであろう?」これが私には不思議でした。不思議といえば例の酒井が最近めっきり剽軽が止んで気むずかしく憂鬱になったことも不思議と云えば不思議でした。

ところが或日その酒井がむっつりとした表情を浮かべたまま一通の手紙を私の手へ黙って渡してよこしました。

手紙の文句は斯うなのです。

「呪われたる接吻に気を付けよ――君は今日それを得るであろう? 曾ては――そうだ過去に於ては、僕のものであった其接吻を!」

無論、最初は何んのことだか、私には明瞭り解かりませんでしたけれど、其日の午後になった時、その意味が解かったのでございます。私は彼女から温室の中で接吻されたのでございます。しかも熱烈な接吻を。

その日以来、支那式の温室は、私達に執っては何より楽しい隠家となったのでございます。恋の隠家、接吻の場所――媾曳の場となったのでした。

そして彼女は料理人の季参に見られるのを恐れながら際どい隙をうかがっては私を温室へ連れ込むのでした。