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Japanische Klassiker mit Furigana

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おんせんだより

温泉だより

芥川 竜之介

Lesen Sie 温泉だより (おんせんだより) von Akutagawa Ryūnosuke (芥川 竜之介) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 6.095 Zeichen · 13 Bildschirme

Aozora Bunko

しかし馬は走り出したと思うと、たちまち麦畑へ飛びこみました。それから麦畑をぐるぐる廻る、鍵の手に大根畑を走り抜ける、蜜柑山をまっ直に駈け下りる、――とうとうしまいには芋の穴の中へ大男の半之丞を振り落したまま、どこかへ行ってしまいました。こう言う災難に遇ったのですから、勿論火事などには間に合いません。のみならず半之丞は傷だらけになり、這うようにこの町へ帰って来ました。何でも後で聞いて見れば、それは誰も手のつけられぬ盲馬だったと言うことです。

ちょうどこの大火のあった時から二三年後になるでしょう、「お」の字町の「た」の字病院へ半之丞の体を売ったのは。しかし体を売ったと云っても、何も昔風に一生奉公の約束をした訣ではありません。ただ何年かたって死んだ後、死体の解剖を許す代りに五百円の金を貰ったのです。いや、五百円の金を貰ったのではない、二百円は死後に受けとることにし、差し当りは契約書と引き換えに三百円だけ貰ったのです。ではその死後に受けとる二百円は一体誰の手へ渡るのかと言うと、何でも契約書の文面によれば、「遺族または本人の指定したるもの」に支払うことになっていました。