Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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せんこうてい「ハビヒツブルグ」

潜航艇「鷹の城」

小栗 虫太郎

Lesen Sie 潜航艇「鷹の城」 (せんこうてい「ハビヒツブルグ」) von 小栗 虫太郎 (おぐりむしたろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 132.395 Zeichen · 263 Bildschirme

Aozora Bunko

すると次の瞬間、巡査の、心も眼も凍らせるような、怖ろしいものが現われてきた。

激しく湧き立つ真白な泡のなかに、なにか水底からもくもくと吹き出てきたものがあった。その、黒い油のように見えるものは、間もなく泡のなかで、不思議な模様を刻みはじめた。それが扇形に拡がったり、泡が打衝って、白い皮膚のようにスウッと滑らかになると、縞に曲線に、乱れ入り組んで、慄っとするような交錯が起り、また砕け散って、鱗を撒いたような微塵模様となるうちに、今度は……細長い指のようなものが、暈っと光って白く……泡の外へ行列蛆のように消えてゆくのだった。

その、のろのろと連なってゆく薄気味悪さには、巡査も思わず顔をそむけた。

舟は、まだ中流にある。

ただ一つの街灯の光が、向うの河岸縁を赭く染めているだけだ。

「いまのは、指じゃないかしら……」

やがて、巡査の眼には、なにものも映らなくなってしまった。ただ聴えるのは、轟々と水を捲き返す、推進機の音だけであった。

すると、湧いては流れ、解けては結ばれる激流のなかに、茫っと光る、白いうねりのようなものが現われた。その光りは、泡の谷を染め、闇空を映す峯を曇らせて、パッパと閃きながら、八方へと衝き拡がってゆく。