Japanische Klassiker mit Furigana
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せんこうてい「ハビヒツブルグ」
潜航艇「鷹の城」
小栗 虫太郎
Lesen Sie 潜航艇「鷹の城」 (せんこうてい「ハビヒツブルグ」) von 小栗 虫太郎 (おぐりむしたろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 132.395 Zeichen · 263 Bildschirme
そうして彼が、絶えずその強い衝動と闘っているうちに、いつの間にか、自分を虐げることに異常な興味を覚えてきた。
卑屈になる、貧乏になる、人に蔑まれる――自分を狂気から救ってくれる道が、ただそれだけのように思われてきた。
「あれからの僕も、そりゃ惨めでしたよ。したい三昧な事をして、わずかあった、金になるものもことごとく失いましたし、しまいには、家内の着物までも裸かにして――その時、僕は独りぽっちになってしまったのです」
それを聴いているうちに、早苗の表情がだんだんに硬くなっていった。彼女は、眼を桟の雪に据えて、凝っと考えていたが、一度はうるんだ瞼も、やがて涸々になった。
掻き立てられた憎悪に身を切るような思いを耐えても、早苗は、もうこの男を容赦しないぞと心に決めた。
彼女は、絶望のなかでもそれだけが、はっきりと光明であるのを知った。自分の肉体を投げ出して、この男を堕ち切るまで堕落させるのだ。無頼な、恥も矜持もうけつけない、腐敗したような性格を作り、しまいには、この男に犯罪までも犯させると――早苗は、父の幻と重ねるようにして、今が、遁してはならぬ復讐の時機だと考えた。