Japanische Klassiker mit Furigana
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せんこうてい「ハビヒツブルグ」
潜航艇「鷹の城」
小栗 虫太郎
Lesen Sie 潜航艇「鷹の城」 (せんこうてい「ハビヒツブルグ」) von 小栗 虫太郎 (おぐりむしたろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 132.395 Zeichen · 263 Bildschirme
早苗は間もなく、生計のために三伝の妻を訪れて、その、出島にある春婦宿で働くことになった。前検事左枝はそうして、早苗が身を削る、いくばくかの金で養われることになったのである。
彼女からは、絶えず鞭のように、憎悪と蔑視とが飛んでくる。出島の一味からは、かつて鉄槌を下したその人の末路かと嘲られる。けれども、もしそれが仮りになかった時のことを考えると、おそらく左枝は、あの衝動と闘うために、気が狂ったのではないだろうか。
左枝はいま、雨沫を浴び、微かに洩れる猟館の燈を目指して歩んでゆく。と、ちょうどその頃、お悦という姐さん株の一人が、早苗と湯気に煙る窓越しの雨を眺めていた。
「ねえ、この淋しさったら、お話しじゃないじゃないの。橋が落ちて、渡船が出来てからは、なんだか、人別を見られるようで気が引けるって、客足は落ちるし、こんな雨の日なんかは、三伝さん御全盛の、あの頃を想い出すよ」
その、坂東お悦という古顔の女は、これまで三伝のもとを一日も離れたことはなかった。丈が低くて、まん丸こくって、太い咽喉がいつもベトリと汗ばんでいる。そのくせ、齢の割に皮膚が艶々しく、どこか娼婦というよりも喰物の感じが強い女だった。