Japanische Klassiker mit Furigana
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せんこうてい「ハビヒツブルグ」
潜航艇「鷹の城」
小栗 虫太郎
Lesen Sie 潜航艇「鷹の城」 (せんこうてい「ハビヒツブルグ」) von 小栗 虫太郎 (おぐりむしたろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 132.395 Zeichen · 263 Bildschirme
もしあの夜、楽屋に入った儀右衛門を、村次郎が知っていたとすれば、思うに自分は燃えさかる熱蝋を胸に突きつけられて掴もうにも由なく、足を引きながらたあいなく後ずさりして、一滴一滴と、手から腕にまた胸に、憐れな蝋涙をうけていかなければならぬのではないか。
そうして、朧気に迫ってくる恐怖に、ひしと悶えて日を送るうちに、いよいよ法水の肝入りで、一座の東都初登場となった。
その乗り込みの前夜、はからずも事件の神秘を、一つ解くことができた――それは、風が収まればと云った、里虹の謎なのであった。
そこは、上州藤岡の劇場で、乗り込みを両三日中に控え、ちょうど千秋楽の日であったが、儀右衛門はひさかたぶりに、法水の来訪をうけた。
舞台裏には、唐人殺しに使う、提琴や矢筒などが、ところ狭く散らばっていて、開場前の劇場は、空間がなんとなく物侘びしげであった。
ところが、しばらく見ぬ間に、儀右衛門は見る影もなくやつれ果て、青々とした剃り跡が、ひときわ目立っていた。法水の眼には、それが雲母を地にした写楽の大首か、それとも、何かの死絵のように見えた。
彼は、儀右衛門の頭が上らぬ間に、早々切り出した。