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Japanische Klassiker mit Furigana

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しょうねん

潤一郎ラビリンスI――初期短編集

谷崎 潤一郎

Lesen Sie 潤一郎ラビリンスI――初期短編集 (しょうねん) von 谷崎 潤一郎 (たにざきじゅんいちろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 41.319 Zeichen · 84 Bildschirme

Aozora Bunko

中へ這入ると、推測に違わず正面の螺旋階の上り端に、―――大方光子が私の為めに置いて行ったものであろう。半ば燃え盡きて蝋がとろ/\流れ出して居る手燭が、三尺四方へ覚束ない光を投げて居たが、私と一緒に外から空気が流れ込むと、炎がゆら/\と瞬いて、ワニス塗りの欄干の影がぶる/\動揺して居る。

固唾を呑んで抜き足さし足、盗賊のように螺旋階を上り切ったが、二階の廊下はます/\真っ暗で、人の居そうなけはいもなく、カタリとも音がしない。例の約束をした二つ目の右側の扉、―――それへ手捜りで擦り寄ってじっと耳を欹てゝ見ても、矢張ひッそりと静まり返って居る。半ばゝ恐怖、半ばゝ好奇の情に充たされて、まゝよと思いながら私は上半身を靠せかけ、扉をグッと押して見た。

ぱっと明るい光線が一時に瞳を刺したので、クラクラしながら眼をしばたゝき、妖怪の正体を見定めるように注意深く四壁を見廻したが誰も居ない。中央に吊るされた大ランプの、五色のプリズムで飾られた蝦色の傘の影が、部屋の上半部を薄暗くして、金銀を鏤めた椅子だの卓子だの鏡だのいろ/\の装飾物が燦然と輝き、床に敷き詰めた暗紅色の敷物の柔かさは、春草の野を蹈むように足袋を隔てゝ私の足の裏を喜ばせる。