Japanische Klassiker mit Furigana
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しょうねん
潤一郎ラビリンスI――初期短編集
谷崎 潤一郎
Lesen Sie 潤一郎ラビリンスI――初期短編集 (しょうねん) von 谷崎 潤一郎 (たにざきじゅんいちろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 41.319 Zeichen · 84 Bildschirme
折角楽しみにして遊びに来たかいもなく、何だかがっかりして私はあてどもなく、其処らを歩き廻った。
「兄さん、さあ甘酒を飲んでおいで、お銭は要らないんだよ」
甘酒屋の前へ来ると赤い襷をかけた女中が笑いながら声をかけたが、私はむずかしい顔をして其処を通り過ぎた。やがておでん屋の前へ来ると、また、
「兄さん、さあおでんを喰べておいで、お銭がなくっても上げるんだよ」
と、頭の禿げた爺に声をかけられる。
「いらないよ、いらないよ」
と、私は情ない声を出して、あきらめたように裏木戸へ引き返そうとした時、紺の法被を着た酒臭い息の男が何処からかやって来て、
「兄さん、お前はまだお菓子を貰わねえんだろう。けえるんならお菓子を貰ってけえりな。さ、此れを持って彼処の御座敷の小母さんの処へ行くとお菓子をくれるから、早く貰って来るがいゝ」
こう云って真紅に染めたお菓子の切符を渡してくれた。私は悲しさが胸にこみ上げて来たが、若しや座敷の方へ行ったら信一に会えるか知らんと思い、云われる儘に切符を貰って又庭の中を歩き出した。
幸いと其れから間もなく附添の女中に見附けられて、
「坊ちゃん、よくいらしって下さいました。