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Japanische Klassiker mit Furigana

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しょうねん

潤一郎ラビリンスI――初期短編集

谷崎 潤一郎

Lesen Sie 潤一郎ラビリンスI――初期短編集 (しょうねん) von 谷崎 潤一郎 (たにざきじゅんいちろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 41.319 Zeichen · 84 Bildschirme

Aozora Bunko

調べて見ると生憎京都の近所はみんな時期が遅れて間に合わなかったが、大阪の住友銀行の友人O君の盡力で、阪神電車の沿道にある一漁村へ、検査の二三日前迄に籍を移せば、其処で受けられる事になった。其の村の検査日は何でも六月の中旬であったと覚えて居る。

兵庫県下なら、汽車へ乗らずとも電車で行けるから、東京の原籍地へ戻るよりはいくらか増しだと私は喜んだ。で、丁度月の十二日の午ごろ、日本橋の区役所から取り寄せた戸籍謄本と実印とを懐にして、五条の停車場へ行った。

真夏らしい日光がきらきらと、乾燥した、埃の多い京都の街の地面に反射し、晴れた空が毒々しく油切って、濃い藍色を湛えて居る日であった。俥へ乗って停車場へ赴く途中、お召の単衣に絽の羽織を重ねて居る私は、髪の毛の長く伸びた揉み上げの辺から、べっとりした血のような汗が頬を流れ落ちて、襟の周囲へにじみ込むのを覚えた。五条の橋から遥に愛宕山を望むと、恰も熔鉱炉の底から煽り上る熱気に似た陽炎が麓に打ち煙って、遠くの野や林はもやもやと霞に曇り、近い町々の甍や石垣や加茂川の水は、正視するに忍びない程、クッキリした、強い色彩に染られて、生々しいペンキ塗りの如く私の瞳孔を刺した。