Japanische Klassiker mit Furigana
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しょうねん
潤一郎ラビリンスI――初期短編集
谷崎 潤一郎
Lesen Sie 潤一郎ラビリンスI――初期短編集 (しょうねん) von 谷崎 潤一郎 (たにざきじゅんいちろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 41.319 Zeichen · 84 Bildschirme
一番ぐでん、ぐでんに酔拂った揚句、前後不覚になって電車へ乗り込んだら、どうにかした拍子に気が紛れて大阪まで無事に行けるだろうと思ったのである。
不自然な、強制的なアルコールの酔が次第次第に肥え太った私の肉体へ浸潤して来た。じっと大人しく腰掛けて居ながら、気違いじみた酩酊が立派に魂を腐らせて行き、官能を痺れさせて行くのが、自分でもよく判るように感ぜられた。私はいつかとろんとした、慵げな眼を見張って、賑かな、明るい往来の、種々雑多な音響と光線の動揺を凝視して居た。
五条橋の袂を、西東から行き交う人々の顔が、みんな汗にうじゃじゃけて、赤く火照って、飴細工の如く溶けて壊れ出しそうに見えた。絽縮緬や、明石や、いろいろの羅衣にいたわられて居る若い美しい女達のむくむくした肉が、一様にやるせない暑さを訴えて、豚の体のようにふやけて居るのを見た。汗………夥しい人間の汗が、蒸し蒸しゝた空気の中へ絶えず発散して其処辺一面に漂い、到る所の壁だの板だのにべとべととこびり着いて居るらしかった。―――「街には汗の靄が立って居る。」―――と、誰か、デカダンの詩人が歌いそうだ。………