Japanische Klassiker mit Furigana
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しょうねん
潤一郎ラビリンスI――初期短編集
谷崎 潤一郎
Lesen Sie 潤一郎ラビリンスI――初期短編集 (しょうねん) von 谷崎 潤一郎 (たにざきじゅんいちろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 41.319 Zeichen · 84 Bildschirme
活動写真の布へ皺が寄るように、時々、街路の光景が歪んだり、凹んだり、ぼやけたり、二重になったりして、瞳に映った。「もう己は何も判らない程酔って居るのだ。」と云う事が、自分の気を強くさせ、大胆にさせる唯一の手頼りであった。
私はいよ/\電車へ乗る可く決心して、途中で酔の覚めないようにもう一本ウイスキーを購った。それから、萬一、萬々一例の恐怖に襲撃された時の要心に、頭を冷す為めの氷のブッカキを買って、其れをハンケチへ二重に包んだ。
こんなにして、上り降りの群衆に揉まれながら、辛くも改札口まで押し出されて行った私は、切符に鋏を入れて貰らって、プラットフォームへ漕ぎ着けるや否や、再び其処に呪われた運命が待伏して居たのを発見した。ぶうッ、ぶうッ、ぶうッ、物凄い鼻息を打っかけて、傲然と出発の用意を整えて居る車台を見ると私の神経は、アルコールの酔を滅茶々々に蹈みにじり、針のような鋭敏な頭を擡げて顫え戦き出した。同時に居ても立っても溜らないような、一遍に魂を引裂いて発狂か卒倒の谷底へ突き落し兼ねないような、どえらい恐怖が五体に充満して来たので、私は思わずハッと躍り上った。